大転職時代到来
数年前から、転職サイトやエージェントの広告を多く目にするようになりました。
僕自身転職をした身ですし、同級生でも転職経験のある人は少なくありません。
収入
人間関係
スキルアップ
様々なものを求めて転職をすることが当たり前になってきているようにも感じます。
転職は普遍的な希望!?
僕も今年、教員からフリーへと転職を経験しました。
個人的にはとても思い切った選択で、なかなか共感されないと思っていましたが、報告した先々で
「いいな~ 僕も考えていたけど、行動できなかったよ!」
と言われました。みんな考えているんですね。
職を変えたいというのは割と普遍的な希望なのかもしれません。
今回はどうしたらよりよい転職ができるのか、学んでいきたいと思います。
参考図書紹介
今回勉強させていただくのは、鈴木祐さんの『科学的な適職』です。感覚的なお話しではなく、科学的論拠に基づいて「適職」と向き会うことができるので、自分自身の勘違いなどを自覚することができました。
概要
適職の定義は
「幸福が最大化される仕事」
誰もが仕事をして幸せになりたいと思うのに、日常的に仕事に不満を抱いてしまうのも事実。
そもそも仕事選びという概念自体が近代以降のものなので、人間には仕事を的確に選ぶ力が備わっていません。その中で、適職を選んでいくには、自分自身のことをきちんと理解し、将来について明確にし、バイアスを取り除き、といった丁寧な作業が必要です。
世間には性格テストなど様々な自己分析ツールがありますが、今回大切にされているのは「科学的な論拠はあるのか」という点。科学に基づいて、適職選びができるようにする方法が具体的に紹介されています。
おすすめの人
・転職を考えている方
・これから就職する学生さん
・今の仕事をもう一度見直したい方
著者紹介
鈴木祐(すずき ゆう)さん
言わずと知れたサイエンスライターさんです。学生のころから論文を多く読まれており、自称「日本一の文献オタク」。
ご自身でもパレオダイエットを実践されており、健康法や心理・脳科学などの分野を中心に執筆されています。
今回の学び
1,なぜ仕事への不満が多いのか 転職の理由
1‐1 脳は仕事を選べない
厚生労働省の調査によると、入社三年以内に退職する人の割合は大卒で30%以上。動機は「思っていた仕事と実際の内容が違う」が最も多く、ネガティブな退職が多いようです。
人が適職を選べない理由は
「視野狭窄」
です。
お金に釣られる
逃げで職を決める
自信がありすぎる(なさすぎる)
といったポイントに集中してしまうと、より良い可能性にたどり着けないということが起きます。これはどんな優秀な人にも起きる現象です。
ではなぜ、視野狭窄は起きるのか。
それは人間の脳に「仕事を選ぶ」というプログラムが存在しないからです。
歴史的に見ると、仕事が選べるようになったのは近代以降。それまでは職業はほぼ家庭に依存していましたので、自由な職業選択の歴史はとても浅いです。
複数に分岐した未来の可能性を踏まえて現在の選択をするということが脳は苦手です。適職選びに必要なこの力が備わっていないというのが、私たちが職をうまく選べない原因なのです。
1‐2 適職とは?
そもそも適職とは何なのか。本書では
「幸福が最大化される仕事」
と定義されています。
「自分の才能を発揮できる仕事」や「好きなことを仕事に」のような定義はされていません。才能が生かせていたとしても、幸福でないなら適職ではないということです。
そこで著者が適職選びの方法として提案しているが「AWAKE」です。
1‐3 適職を選ぶための「AWAKE」
「AWAKE」は、適職を選ぶための5つのテクニックを体系化したものです。
①Access the truth:幻想から目覚める。
自分や世間が考えている仕事選びに対する考え方が本当に正しいのかを検証します。
②Winden your future:未来を広げる
人間が幸福を感じる要素は何なのかを学び、自分の仕事選びの視野を広げます。
③Avoid evil:悪を取り除く
②とは逆に人間が不幸を感じる条件について考え、困難を取り除く方法を実践します。
④Keep human bias out:歪みに気づく
自分の脳の中にある「バグ」を探し、自分の意思決定の方向性が間違っていないか確かめます。
⑤Engage in your work:やりがいを再構築する
自分の仕事選びがどこまで正しいか、仕事にやりがいを持つにはどうしたらよいかを確認し、幸福が感じられるようにしていきます。
以上のように、意思決定の精度を上げ、仕事で幸福を感じられるようにしていく方法が「AWAKE」です。
本著では、それぞれについて科学的に基づく具体的な方法が紹介されています。
僕も実践しましたが、特に④で自分自身のバグ、思い込みに気づけたのは印象的です。数値化して検証するフェーズが多いので、自分の思考を客観的に見つめることができます。
2、AWAKE実践!
2‐1 仕事への幻想 仕事に対する7つの誤解
まずは一つ目の「幻想から覚める」パートから。
僕たちが陥りがちな仕事に関する勘違いを認識する作業です。つまり、人間の幸福とは関係ない仕事の要素について認識しておくことです。ここを誤解したまま仕事を探してしまうと、せっかく選んだ仕事が全然幸せと関係なかったということを防ぐことができます。
では、その幻想とは何か。7つの要素とその根拠を簡単に紹介します。
・好きを仕事にする
仕事はやっていくうちに好きになると考える、仕事は仕事と割り切る、といった考え方の方が幸福度が高い。
・給料の多さで選ぶ
幸福は収入が多くなるより、健康・結婚などの方が相関関係がある。冷蔵庫が二つ要らないようにお金にも限界効用があり、一定以上で幸福への影響力が低下する。
・業界や職種で選ぶ
有望な業界や職種は専門家でも予測ができない。今と10年後でやりたいことが違う可能性がある。
・仕事の楽さで選ぶ
仕事が楽すぎることは幸福度を下げる。適度なストレスは健康に必要なくらい大切。幸福度への影響は裁量権の方が大きい。
・性格テストで選ぶ
性格テストの結果は個人の解釈で受け取り方が異なってしまう。ほとんどの調査方法に科学的な根拠が存在しない。
・直感で選ぶ
直感が働くためには、厳格なルール、練習回数、素早いフィードバックが必要。合理的に考えた方が結果への満足度が高い。
・適性にあった仕事を選ぶ
個人のパフォーマンスを左右する変数が多すぎて適性を測れるテストがない。強みは相対的に評価されるもの。
どれも仕事選びでよく聞くアドバイスばかりです。短期的に幸福度を高めてくれることはあっても、長期的な満足にはつながらないことが分かっています。
2‐2 視野を広げる 幸福度を決める7つの徳目
仕事選びがうまくいかない大きな原因は「視野狭窄」です。特定の選択肢にのみ意識が向かっていて、それ以外の選択肢について考えられなくなってしまっている状態です。
その視野狭窄から解放されるためには、仕事で幸福を感じるのに必要な条件を知ることが必要です。幸福を決めているポイントが分かればその選択肢がどの程度正しいものなのか、判断することができます。
仕事の幸福度を決める項目とは以下の7つです。今回も少しですがそれぞれの根拠とともに紹介します。
・自由
作業のスケジュールが好きに設定できる、タスクの内容が好きに選べる、ルールに意見が言える、といった自由度が高いほど幸福度が高くなる。
・達成
モチベーションには少しでも仕事が前に進んでいると感じられるとき。明確な目標があり、仕事に対するフィードバックが早いことで小さな達成感を味わうことができ、幸福感にもつながる。
・焦点
数少ない有効な性格テスト「制御焦点」で判断する。
攻撃型:利益に焦点を当てるタイプ。競争が好きで大きな目標を持つ。
→進歩や成長を感じやすい仕事に向いている。
防御型:目標は責任ととらえる。失敗しないように動く。
→安心・安全を感じる仕事に向いている。
・明確
ほめる・罰するの基準やタスクの手順・期限などが明確なこと。
・多様
自分が持つ様々なスキルを活用することができる、プロジェクトの始まりから終わりまでの工程にかかわることができる、ことで幸福度が高くなる。
・仲間
職場選びは仲間選び。自分と似た人を好きになる傾向があるので、そのようなタイプの人がいるかどうか。
・貢献
他者への貢献がわかりやすいこと。社会や他者への貢献で、自尊心・親密感・自律性が満たされる。
これら7つの項目を満たしているかどうかを考えるだけでも、一つの選択肢にこだわり視野狭窄に陥ることを防ぐことができます。ここでも本当にその項目が幸せとつながっているのか、という視点も大切ですね。
具体的に7つの項目について評価する「イニシャルリスト」「徳目アテンション」「徳目クエスチョン」といった具体的な方法についても紹介されています。
2‐3 不幸な要素を避ける
幸福になるための項目について紹介しましたが、不幸になる要素を確認します。
人間はネガティブなことをポジティブなことの6倍強く感じるといわれているので、ポジティブを増やすと同時に、ネガティブを避けることもとても重要です。
不幸になる仕事の特徴は大きく分けて2つ。
①時間の乱れ
・シフトワーク(夜勤と日勤など、生活のリズムが乱れる仕事)
・長時間通勤
・長時間労働
・ワークライフバランスの崩壊(休日に仕事について考えることもNG)
②職務の乱れ
・雇用が不安定
フリーランスなどのギグエコノミーは、始めは自由を感じられるが、不安定さによるストレスが蓄積してしまう。
※高度な専門的スキルを持つ人はフリーでも幸福度が増す。
・ソーシャルサポートがない(仲間は受け入れてくれるという心理的完全)
・仕事のコントロール権がない
・組織内に不公平が多い
これらの特徴は、健康被害を生じさせることもあり、幸福に直接影響します。転職を考えている仕事にこれらの特徴がないか、しっかりと調査することが大切です。
2‐4 現時点で最適な仕事を探す
ここまで「実は幸福とは関係のない要素」「幸福になるための要素」「不幸にになる要素」
を見てきました。これらを意識して仕事選びをすることが重要なわけですが、すべてを完璧に満たす仕事はなかなか見つかりません。
現実的には、2‐1~2‐3までの要素を基準に、今ある選択肢がどのくらい幸福に貢献してくれるかを分析することが大切です。
①プロコン分析:ざっくりとした方向性を決める。
プロコン分析では、特定の悩みに対してそのメリット/デメリットを抽出し、項目ごとに採点するという方法です。
②マトリックス分析:複数の選択肢を比較する
選択肢について、幸福になれる要素・不幸になる要素を採点し、比較します。主観的な評価でも構いません。とにかく数値化しながら、調べていく中で分かったことがあれば修正していくというスタンスでもOK。表計算を作っておけば簡単に修正がかけられます。
③ ヒエラルキー分析
客観的なデータや個人的な好みも判断材料に組み込んで分析できる意思決定のツールです。
これはかなり複雑な方法なので、また別の記事に記載します。ぜひそちらも読んでみてください。
2‐5 脳のバグ、バイアスから解放される
脳のバグ、バイアスとは何か
これまで、意思決定の方法について学んできました。
しかし、どんな優秀なツールを用いてもよい結果に結びつくとは言えません。むしろ間違った選択をしてしまうことがあります。
それは私たちの脳に「バグ」が存在するからです。ここでいうバグは「バイアス(思い込み)」のことです。
バイアスにはどのようなものがあるのか紹介します。
①確証バイアス
一度信じてしまうと、それを裏付ける情報ばかりを集めてしまうので、思い込みが深くなっていく。
②アンカリング効果
選択肢の提示のされ方によって、印象が変わってしまうこと。朝三暮四。
③真実性の錯覚
繰り返し目にしたものを正しいと思い込んでしまう現象。
④フォーカシング効果
重要視している要素が、実際よりも大きな影響力を持っているように感じられてしまう現象。
⑤サンクコスト
これまでかけてきた時間やお金が理由で、これまでの選択肢にこだわり続けてしまう状態。
⑥感情バイアス
ポジティブな感情を引き出してくれる情報に飛びついてしまう原理。
様々なバイアスが存在します。バイアスの厄介なところは、認識していても「自分は大丈夫」と感じてしまうことです。
このバイアスの影響を小さくして意思決定を行うためには、あらかじめ決めておいた手順(プロトコル)に従って進めていくことが重要です。
バイアスを取り除く方法
バイアスを取り除くプロトコルを紹介します。
①時間操作系プロトコル
私たちは、将来の予測が苦手です。希望的観測をしてしまったり、根拠のない予測を信じてしまったりします。
そこで、将来をなるべくはっきり思い描くための方法が「時間操作系プロトコル」です。
・10/10/10テスト
この選択によって、
10分後どう思うか?
10か月後にはどう思うか?
10年後にはどう思うか?
という異なる時間軸で考えると、目の前のバイアスからいったん目を離すことができます。
未来を思うことで判断能力が上がるという研究データもあり、「拡張された自己」と呼ばれています。
・プレモータム
今回の選択が完全な失敗に陥ったとして、3年後の未来を想像するという方法です。
この失敗がどのような原因で起きてしまったのか思いつく限り挙げます。
思いついた原因を時系列で並べていきます。
こうすることで、失敗のプロセスがかなりリアルにイメージできるようになります。
ここまでくればあとは対策を考えればよいだけです。この対策も各タイミングで、あるべく具体的なものが挙げられると、意思決定の制度が高まります。
②視点操作系プロトコル
バイアスの正体は「自分のことがよくわからない」とも言えます。なので、ここでは視点を変えることで、バイアスから離れる方法を確認します。
・イリイスト転職ノート
自分の行動を三人称(彼は~/彼女は~)という形式で記録するという方法です。継続していくことで、自分を客観的に見ることができるようになります。
記録をしておくことで、自分の意思決定のプロセスがあとから確認できるようになり、過去に対して都合の良い解釈ができなくなるというメリットもあります。
・友人に頼る
ここにきてびっくりするくらいシンプルな方法です。
自分の視点から離れる最も簡単な方法は、誰かの視点を借りることです。別の誰かに自分について分析してもらうことで、自分のバイアスから離れた意見を手に入れることができます。
また、他人にフィードバックをもらう際には、
・360度、いろんな人から意見をもらうのがよい
・知り合ってから1~3年くらいの相手に相談するのが最も正確性が高い
・クローズドクエスチョン(はい/いいえ で答えあられる質問)で質問する
・ちょうどいい存在がいない場合は、親友がどうアドバイスしてくれるかをイメージする
という点も踏まえておくとより効果的です。
バイアスがかかると、正しい判断は難しくなります。バイアスは存在するものという前提にたち、意思決定のプロセスをあらかじめ決めてから考え始めることが重要です。
2‐5 仕事を評価する
今の仕事を再評価してみる
ここまで、新しい仕事をどのように考えるべきか、を見てきました。
しかし、今の仕事がどのくらい自分の幸せに貢献しているか、も考えることが重要です。
今の仕事がなんとなくいや、という理由で転職してしまうと、やっぱりしなきゃよかったということにもなりかねません。
まずは、自分の今の仕事を再評価してみましょう。その際に一つ活用できるのが、先ほど紹介した」「ヒエラルキー分析」です。自分の今の仕事に対しても使ってみることで、転職先との比較を行うことができます。
また、「仕事満足度尺度」という手法も紹介されています。
このテストは、あなたが今の仕事からどのくらいの幸福度を得られているか、を測ることのできるテストです。全部で64問あり、
・給与や福利厚生
・労働環境
・キャリア形成
・上司
・社内コミュニケーション
・ワークライフバランス
・能力開発
・安心感
などの項目が評価できます。
これら2つのテストで仕事を再評価しなおすと、意外と悪くなかったと気づく人も少なくないそうです。
この結果が最悪で、という方は転職を考えましょう。しかし、悪くないと感じた人は、次のステップで、今の仕事について考え直すこともありかもしれません。
今の仕事を自分の価値観でとらえなおす
料理をする際も、野菜を切って焼く仕事と思うと苦痛ですが、家族と団らんを楽しむための準備ととらえると、前向きになれます。
仕事も同じで、そこに価値を見出すことができることは、幸福につながる要素の一つです。
そこで、「ジョブクラフティング」という手法を用いて、仕事の価値を見出していきます。
これもかなり複雑な方法ですので、今回は簡単に紹介します。詳細は別記事で解説します。
手順は
・タスクを書き出す。(ビフォースケッチ)
・それぞれのタスクに費やす時間とエネルギーを%で表す。
・ビフォースケッチについて、分析する。
・自分の仕事に対する「動機(どんな価値観を達成したいか)」、「嗜好(どんな能力を発揮したいか)」を書き出す。
・書き出した動機と嗜好をビフォースケッチのタスクに一つずつ当てはめる。(課題クラフティング)
・それぞれのタスクに最も関係する人や部署を書き入れる。(関係性クラフティング)
・タスクをグループ分けして、グループごとの自分にとっての役割を考える。(認知クラフティング)
・以上を基に役割を達成するための「アクションプラン」を考える。
となります。
仕事の価値を見つめなおしたうえで実際の行動まで考えます。これを基に行動し、さらにその成果について定期的に評価することも大切です。
まとめ
今の仕事がいや
別の仕事の方が向いているに違いない
現状の強い感情に動かされてしまうとり合理的な判断ができません。
今回紹介したのはそんな時でも、あくまで科学的に
「幸福が最大化される仕事」
を探すための手段「AWAKE」です。
幸せとは関係のない要素を知り、
幸せになるための要素を知り、
不幸になってしまう要素を知り、
自分のバイアスを取り除き、
その時の仕事をどう感じているのか評価する。
自分の人生を幸福に生きるうえで、仕事選びはとても大切です。今新しい仕事を考えている方はぜひ実践してみてください。
今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。
今後も新しい学びを紹介していきますので、よろしくお願いします。
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