2021年NHK大河ドラマ「青天を衝け」の主人公に取り上げられた渋沢栄一。2024年から発行される新しい一万円札の顔としても話題になりました。今回はその渋沢栄一の著書(厳密には講話)から、彼の人生と教えを紹介します。
渋沢栄一とは?
渋沢栄一は、江戸時代末期1840年(天保11年)に武蔵国血洗島(現在の埼玉県深谷市)で生まれました。家は藍玉を製造する大農家でした。そこで家業を手伝いながら、同郷の仲間と剣術の鍛錬や学問を学んでいました。
渋沢栄一の略歴
・地方豪農の子供
・尊王攘夷運動の志士
・一橋家の家来
・幕臣としてフランス留学
・明治時代の官僚
・実業家
渋沢栄一は倒幕から幕臣になるなど大きく立場を変えながら活躍した人物です。
渋沢栄一の業績
渋沢栄一を紹介されるときによく使われるのが「日本資本主義の父」という言葉です。それは、彼がフランス留学の際に目の当たりにした欧米の当時最先端の経済の仕組みを導入しようと奮起したからです。具体的には、大蔵省役人として明治政府の新しい国づくりに参加、実業家として約500もの企業の設立に関わったとされています。その企業の中には今日まで続くJRやサッポロビール、みずほ銀行などがあります。
「論語と算盤」から学んだこと
彼の本として有名なのが「論語と算盤」。厳密には本人の執筆ではなく、彼の講演をまとめた本です。今回は「論語と算盤」から学んだ3つの大きなポイントを紹介します。本人の著書としては「雨夜譚」が有名です。そちらもぜひ。
士魂商才
この本の肝ともいえるのがこの「士魂商才」。つまり武士道=道徳をもって、商売を行うべきであるということです。
資本主義社会では、商売はともすると過激な競争や私利の活動になってしまいます。渋沢栄一の生きた明治初期も資本主義は未成熟で、私利に走ってしまう商人がいたり、商売を意地汚いものと批判する風潮があったといいます。
そこで、栄一は商売は社会の成長に必要であると説きます。絶対に勝ってみせるという気概がないと社会は成長しないということです。これは商売だけでなく、学術や芸術においても同じです。栄一自身、外国に負けないという強い意志をもって実業活動を行っていました。
しかし、ただ相手に勝つだけでは私利と変わりません。そこで大事なのが士魂です。栄一は「論語」こそ商人が大切すべき道徳であるとしています。この道徳に従って、社会の成長のために商売に励むべき、というのが「士魂商才」の意味するところです。
智・情・意
では、その道徳とは何なのか。本の中ではいくつも紹介されていますが、最も中心的なのが「智・情・意」です・
智:知恵。物事の善悪を見抜けること
情:情愛。相手のことも考えられる思いやり
意:意思。感情をコントロールする強い志
これら3つがバランスよく行動や言葉に発揮される状態を「常識」と呼び、この常識をわきまえることが道徳であるとしています。
また、思考だけでなく、理論と実践の調和を図ることも重要であるとしています。
成功と失敗は、身体に残ったカス
独特の言葉です。これは結果ばかりを気にしないという意味です。商業の世界では成功者が優れていて、失敗はダメなこととされてしまいがちです。しかし、結果には運の作用もあり、父版大切なことではありません。
成功や失敗というのは、結局、心を込めて努力した人の身体に残るカスのようなものなのだ。
『現代語訳 論語と算盤』渋沢栄一 (訳:守屋 淳)
成功を意識しすぎると、自分のことばかり追い求めてしまい、結局は相手を貶めることもいとわない「悪意の競争」に堕ちてしまいます。
栄一はどんな規則よりも、人が「思いやりの道」を行動の基準にすることの方が優れていると説きます。結果にとらわれず、自分の信念に従い、正直に行動できることこそが重要なのです。
まとめ
渋沢栄一は江戸末期から明治という激動の時代を生き抜いた人物です。その中で、翻弄されながらも自分の信念に従い、日本に資本主義を導入するという成果を成し遂げた人生や考えには、現代を生きる私たちにも学ぶべき点がたくさんあります。
現代は明治維新並みの変革期ともいわれます。大きく社会が変わろうとしている今だからこそ、そんな時代を生き抜いた渋沢栄一からもう一度、大切なことを学びたいですね。
【参考文献】
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