こんにちは、たくみです。
前回まで近代の哲学について学んできました。
カントへの批判から始まったドイツ観念論は
ヘーゲルの弁証法の開発によって、完成を見ます。
ここまで学んで来ると
この弁証法的な発展こそが哲学の特徴のようにも思えます。
イギリス経験論と大陸合理論からカントが登場したように
ある意見には必ず批判があり、それらを大きく包み込もうとするもう一つの意見が誕生するということは
哲学において繰り返されてきました。
そうして発展してきた哲学ですが
20世紀以降の現代と呼ばれる時代の中では
これまでの哲学全体を大きく転覆させるような思想が登場します。
今回は「現代思想の三統領」と言われた
マルクス、ニーチェ、フロイトの思想について学んでいきます。
≪参考文献≫
今回の学び
近代から現代へ
20世紀は近代から現代へと呼ばれ方が変わるように
大きく社会構造が変化した時代でした。
19世紀の後半から、ヨーロッパ諸国がアジアやアフリカを積極的に植民地化していく「帝国主義」の時代になります。
産業化に遅れていたドイツも、ドイツ帝国の誕生とともに工業化し
ヨーロッパ全土で工業化、都市化が進んでいきます。
そうした中で社会に浸透したのが資本主義です。
家族経営的な産業構造から解放され自由な職業選択が可能になり
多くの人が「労働者」として働くようになります。
一方で資本を持つ人たちは経営者となり、工業化・植民地拡大の中で莫大な富を形成していきます。
社会の変化によって、求められるものが変わるのも哲学の特徴です。
20世紀には社会構造の変化とともに、これまでとは大きく特徴の異なる思想が登場してきます。
マルクス
マルクスは資本主義発展の時代に
「社会主義」という新しい経済構造を提唱した人物です。
資本主義を分析していく中で
資本家が労働者から搾取をしているという点を指摘し
いずれ社会主義による革命が起きると考えました。
マルクスは資本主義の発展から経済的な側面だけでなく
哲学的な法則も見つけ出しました。
それは「下部構造が上部構造を規定する」という発見です。
これまでの哲学は人間は精神的存在という前提で
上部構造が下部構造を決めていくという世界観でした。
マルクスは下部構造が上部構造に影響しながら社会が変化し
歴史が作られているという「唯物史観」を提唱しました。
ニーチェ
ニーチェはこれまでの哲学や宗教が中心的に扱ってきた「善悪」というものを否定していきます。
ニーチェによると善悪などの道徳的な価値は次のように生まれました。
弱者が自分の全くかなわない強者に出会う
↓
悔しくて妬ましく思う=ルサンチマン
↓
自分が勝てる新しい基準を作る
この新しい基準こそ「道徳的な価値」です。
ニーチェは道徳を弱者のルサンチマンの産物ととらえ、無価値なものであるとしました。
このような立場を「ニヒリズム(虚無主義)」といいます。
善悪は無価値ですから
社会に関しても未来に向かってよくも悪くもなりません。(永遠回帰)
このような絶望的な状況を受け入れる人を「超人」と呼び
人間はこの超人を目指すか、超人への橋渡しをすべきだとしました。
ニーチェの有名な「神は死んだ」は
道徳の否定とともに、その根拠であった神も不要であるということを示した言葉です。
フロイト
フロイトは、デカルト以降続いてきた自分中心の世界観を否定します。
フロイトは行動の背景には「無意識」があるとします。
例えば、トラウマという心の動きは
過去に経験した嫌なことが無意識に思い起こされて
今の行動に作用することです。
自己愛(ナルシシズム)も
乳児期に母親に好かれたいと思いながら
自分が全く敵わない父の存在に屈し
そのしつけに従うことで
両親にとっていい子という「理想自我」を作り上げて出来上がっています。
これまでの哲学では
絶対的存在として、自分の中に自我を想定していましたが
フロイトはその自我の中にも他人からの影響があり
それが無意識として今の行動に影響していると考えました。
まとめ
マルクスは思想や道徳よりも実生活の方が先に変化して影響を与えていくとし
ニーチェは道徳を無価値なものであるとし
フロイトは自我は自分だけのものではないとし
これまでの哲学の根本的とも前提ともいえるような
核心をひっくり返すような考え方を提唱していきます。
これらの思想は哲学だけでなく
政治や宗教、芸術などにも大きな影響を与え
新しい時代を形成していくことになります。
こうしたなかで20世紀の哲学は
・言語分析哲学
・現象学、実存哲学
・構造主義
という大きな3つの流れを生んでいきます。
次回は現象学について学んでいきたいと思います。
今回も最後までお読みいただきありがとうございました。
また次回もよろしくお願いします。
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