こんにちは、たくみです。
前回まで西洋の哲学について学んできました。
西洋の哲学は一般に耳にする人物も多く
ギリシャ哲学やデカルト哲学など
思想も少しは知っているものがありました。
しかし、背景にあるキリスト教の世界観などが
生活にしみついているわけではなく
感覚的に理解しずらいものもありました。
今回からは自分たちの生活感覚とより近い
東洋の哲学について学んでいきたいと思います。
≪参考文献≫
今回の学び
今回からは東洋の哲学について学んでいきます。
現在の学問は多くの分野で西洋の影響が大きいです。
それは哲学についてもあてはまります。
しかし、歴史的に見ると西洋の影響が大きくなったのは
産業革命以降の200年程度です。
これまでの数千年、世界史の中では
中東から東洋が先進地域でした。
今回は歴史をけん引してきた東洋の哲学について学んでいきたいと思います。
インド哲学の歴史
インドでは紀元前9世紀ころまでに「ウパニシャッド哲学」という思想が完成していました。
この頃のインドではバラモンと呼ばれる聖職者が中心となり
農村社会が成立していました。
紀元前5世紀ごろには商工業が発展し、貨幣経済が広がると
商人(ヴァイシャ)やクシャトリア(王族)が台頭してきました。
こうした社会の変化の中で、ジャイナ教や仏教などの宗教・思想が発展しました。
仏教は東南アジアや東アジアへと展開し
土着の信仰や思想と結びつき、影響を与えました。
ウパニシャッド哲学
仏教やジャイナ教など思想の元となり
インド社会の根底にあるのが
ウパニシャッド哲学です。
ウパニシャッドの世界観では
生物は死後別の個体として生まれ変わるという循環があります。(輪廻)
死後の世界
死後に行く世界は2種類あります。(二道説)
一つは、月の世界へと行く「祖道」です。
生前の善行分だけ月の世界にいることができ
それが尽きるとまた地上へと転生します。
そうして魂は永遠の循環の中で生きていくことになりますが
そこから抜け出すこともできます。(解脱)
輪廻から解脱する道が「神道」です。
バラモン教では死後にブラフマンに直面し
「おまえは誰だ?」と問われます。
そこでうまく答える事ができると解脱することができます。
「うまく答える」とはどういうことでしょうか?
解脱するには「梵我一如」
世界にはブラフマンとアートマンがあります。
ブラフマン(=「梵」)は唯一の実存で絶対的な存在です。
宇宙や万物の根本原理でもあります。
アートマンは各個人の中にある魂のような存在です。
生命や活力を与えてくれています。
アートマンは消滅することがないので
個体が滅んだ後も転生し、永遠に輪廻を続けることになります。
ブラフマンはすべての根本原理です。
逆に言うとすべてのものは結局ブラフマンということです。
とすると、自分自身のアートマンも
ブラフマンということができます。
ブラフマンとアートマンは実は一体ということです。=梵我一如
この真理が理解できていると解脱をすることができます。
なので死後ブラフマンからの「おまえは誰だ?」に対しては
「私はお前だ」
と答えることになります。
これらの思想はバラモン教の聖典『ヴェーダ』の一部として
『ウパニシャッド』にまとめられました。
仏陀の思想
仏教思想を確立したのが仏陀です。
仏陀の思想の中心は「四法印」と呼ばれる4つの思想です。
四法印
諸行無常
すべてのものは変化し続けます。不変の実体というものはありません。
諸法無我
諸行無常なので、ウパニシャッドのブラフマンやアートマンなども否定されます。
すべてのものに実体はありません。
一切皆苦
人生には生老病死といったあらゆる苦しみがあります。生きることは基本的に苦しいことです。
涅槃寂静
苦しみの原理を悟り、すべての苦しみから解放された涅槃という安らぎの状態こそが目指すべき目標です。
四法印という現実がありながら
それに無知(無明)なことで自我が不変であると勘違いし、自分に固執してしまいます。(渇愛)
これが苦しみの原理であり、この苦しみは輪廻によって永遠に続いてしまいます。
解放のための「四諦八正道」
涅槃に至るためには「四諦八正道」の実践が必要です。
「四諦」とは
・集諦
物事は他のものとつながっている(縁起)。
無明によって生まれる縁起で渇愛が生じているということを知ることが集諦。
・苦諦
一切皆苦であることをを悟ること。
・道諦
八正道を実践すること。
・滅諦
執着を断ち切り、苦を滅すること。滅諦こそが涅槃。
仏陀の思想は実体の存在を否定します。
これはこれまでのウパニシャッドと異なる革命的なものです。
また、ショーペンハウアーなど後の西洋哲学にも大きな影響を与えました。
仏教の派生 小乗と大乗
仏陀の入滅100年が経った頃、仏教は大きく二つの流れへと別れていきます。
一つは、自身の修行によって解脱を目指していく小乗仏教(上座部仏教)です。
これまでの仏教の流れを比較的とどめて、引き継いでいきました。
もう一つは、大衆の解脱を目指す大乗仏教です。
大乗では、誰もが仏の慈悲によって「菩薩(悟りを求める人)」になれるとされています。
さらに菩薩は「六波羅蜜」の実践によって、成仏することができます。
2世紀後半ごろのナーガールジュナ(龍樹)は大乗思想を完成させました。
すべてのものは般若波羅蜜から縁起していて、実体はなく「空」であるとしました。
また、極端なことを否定し、中道を行くことを説いたので「中観派」と呼ばれました。
5世紀のヴァスバンドゥ(世観)は意識を多層構造と捉えました。
その一番根底には「アーラヤ層」があり、その上に感覚や認識などが積み重なっているとしました。
ヨーガ行によって識を浄化でき悟りにいたるとし、「唯識派」と呼ばれました。
7世紀には大日如来を信仰し、現世での成仏を目指す「密教」が成立しました。
すべての生きるものには、仏性(仏としての本性)があるとする『涅槃経』は
東アジアに広がり、影響を与えました。
イスラム
中東では、7世紀にイスラム教が始まりました。
イスラム教における神「アッラーフ」は、ユダヤ教のヤハウェやキリスト教における神と同じ存在です。
これまでに、ノアやアブラハム、モーセ、イエスといった預言者が様々な教えを授かってきました。
そして、最後の預言者ムハンマドが完全な教えを授かったとされています。
その教えは『コーラン(クルアーン)』にまとめられています。
神、天使、聖典、使徒、定命、来世を信じ(六信)
信仰告白、礼拝、喜捨、断食、巡礼を実践すること(五行)が主な教えです。
五行は定期的に行うことが定められており
信者が揃って同じ時期に同じ行為をすることで共同体意識を強めることができます。
交通の要所であるアラビア半島で発達したこともあり、イスラム社会は商人文化が根付いています。
その中では、イスラムの教えにより現在でも無利息を基本とするなどの相互扶助の精神が大切にされています。
まとめ
インド哲学はウパニシャッドという基礎を持っています。
輪廻など死生観は仏教にも受け継がれています。
死後生まれ変わるという感覚は、日本でも分からなくありません。
西洋に比べて地理的にも近く、文化的な影響は大きいようです。
西洋に比べて地理的にも近く、文化的な影響は
次回はさらに地理的にも近い中国の思想について学んでいきたいと思います。
今回も最後までお読みいただきありがとうございました。
また次回もよろしくお願いします。
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